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2018年7月21日土曜日

人が溺れるときは静かである、という話

少し意外に感じる人もいるかもしれませんが、人が溺れるときは静かである事も多いのです。

これは泳ぎが不得手な人ほど静かに溺れる傾向が強いように思います。

ドラえもんの登場人物である、のび太君は、金槌で有名ですね。
アニメでも手足をじたばたさせて「わ、あ、溺れるー!」ともがく姿が描かれることがしばしばありますが、泳ぎが不得手だともがく暇もなく、スーっと沈むことも多いのです。

むしろもがくのは、ある程度泳げる人が、リズムを取り戻そうとしてるときに見られて、水しぶきを上げる事が多いように思います。

溺れるというのは、泳ぎの練習とは違うのです。
バシャバシャなると思ったら大間違いです。

静かに起こるから、毎年「気がついたら溺れていた」みたいな話がニュースでながれるのです。

特に子どもからは目を離してはいけません。
ビート板や浮き輪に掴まらせていたって同様です。
どんなに力強く握っていようと、どんなに上手にバランスを取っ手いようとも、水や波は不規則に押し寄せてくるものです。
波と波がぶつかって突然、思わぬ大きさの波に揺さぶられることだってあります。

すると、準備をせぬまま水を被ることになりますから、ビート板や浮き輪から手が離れることもあります。
水を思いがけず飲み込むことにもなります。

それで声も出せず、静かに水の中に引き込まれることになるのです。

人の体は、比較的浮かびやすいものではあるから、一度沈んでも水面まで大体において再び上がってきます。
けれど、今言ったように、思いがけず水を飲むと、その浮かんだ一瞬というのは、息を吸うだけで終わってしまいます。
その時にまた波が押し寄せれば当然声どころか息も吸えません。

目だけで必死に「たすけて!」を訴えることになるのです。

今日、プール指導中に、一般の利用者で、4才くらいの女の子が、ご両親と遊びにプールへ来ていました。
その子が溺れかけて、僕が水から引き上げました。

それこそ、その子はビート板に上手くしがみつきながらプールを楽しんでいました。

ご両親も傍で楽し気でした。

ところが、突然波に揺られて女の子の手からビート板がするりと抜けてしまいました。

ご両親は、というと1.5メートルくらい女の子から離れたところで、夫婦で会話をして笑っていらっしゃる一瞬の出来事でした。

決して、子どものことを放ったらかしにしていた保護者ではありませんでした。
上手に子どもと遊んでいらっしゃいました。

ところが、ほんの一瞬です。
ものの3秒くらいの間に、「ビート板から落ちる」「一回浮き上がる」「声も出せずに再度沈む」「目だけ水面に出て(たすけて!)と訴える」という事が起こりました。

たまたま直ぐ脇(2メートルくらい離れたところ)で、僕が生徒とのレッスンをしていて目に入ったから、泳いで近づき引き上げた、という次第です。

ご両親もとても驚いていました。

こういうことが起こるのです。

とても静かに。
誰にも知られずに。

夏休みに入り、プールや海、川に遊びにいくという人も多くなります。

場には大勢の人がおり、“目”がたくさんあるようですが、そのほとんどが“騒ぎ”にしか反応できません。
静かに溺れると、“潜る”こととそう違わずに見えてしまいます。

水場では楽しんでも、決して気を抜いてはいけません。
溺れるときには水深が5センチあれば溺れられるのですから。

「楽しかったね~、また来たいね」と笑い合えるようにするためにも、適度な緊張感を忘れずにお出掛けください。

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