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2020年3月15日日曜日

改めて書字動作について考えてみる

文字を書く、これもまたなかなか大変な作業です。
自転車の乗り方を一旦覚えると、出来なかった頃の苦労とか気持ちを忘れてしまうのと同じで、ついつい簡単なことだと思い込んでしまいます。
でも…実はこういう動作の組み合わせです。

・まずは文字を覚えるということが当然必要です。

・目を使って「今ペン先のある場所を確認する」「ペン先がこれから向かう先を確認する」「ペン先の通ってきた道筋を確認する」とことを経て、文字のバランスや書面のバランスを整えていく必要があります。

・ペンを動かすためには、手首や指先の細やかな動きが必要になります。

・姿勢を保持するために、体幹の筋力も必要ですし、利き手の肘から手首にかけての机(などの盤面)への接触部分で身体を支える必要もあります。

・黒板の板書や教科書を写すなどの作業をするときには、目と共に首を動かす必要がありますし、見たものを記憶して写すという作業も加わります。

・あるいは、周囲に絶え間なく流れ続ける音声の中から必要な情報を選び取って、聞き取り、それを書くということが必要な場合もあります。


ざっと大きく括ったとして挙げても、これくらいのことはパッと出てきます。
それらを組み合わせて「書く」ということが出来上がります。
実に多くのものを含んでいます。

「書字が苦手」と言っても、つまずきの内訳は、それぞれだということです。

学習サポートではそういうことを見ながら子どもとの時間を重ねてもいます。
僕と学習をしている子の中には、板書が苦手だとか、筆記をすること自体が苦手だという子も少なくありません。
それぞれつまずきの理由も違います。
なので、そこへのアプローチも違います。

手立てとして考えていくものとしては、一緒に学習する時間や日常生活の中で取り組めるものが中心になりますから、特別な訓練という時間はほとんど取りません。
僕の場合、例えばこういうことについて検討をしていきます。
という、その一部をご紹介してみたいと思います。

・筆記具の選択。
鉛筆か?ペンか?
鉛筆なら濃さは?
ペンなどの太さや握り心地は?
消しゴムの大きさは?硬さなどの持ちやすさは?
筆記具の量は、ペンの本数種類、本人が把握と管理を行えて、使いこなせるか?

・筆記面の検討。
紙の材質で、ペンとの摩擦が変わりますから、「書きやすさ」に直結します。
書くことが大変な子は「書きやすさ」が大切です。
色も例えば「真っ白」で良いのか?まぶしくて…ということもあるかもしれません。
筆記面の面積についても、大きすぎないか?小さすぎないか?ということは考えたいですね。

・書く量と時間の調整。
自由に筆記する時間であれば気にすることもありませんが、授業のように限られた時間で筆記を求められる場合には、書字速度も求められることが多いです。
その為、どこまで本人に書いてもらい、どこからプリントなどで対応するか?あるいは代筆するのか?ということを考える必要があります。
「疲れる」ということを全く排除することもできませんが、軽減することはできないか?ということは考える必要があります。
「書く」ということ自体が目的になることは非常に少ないと思いますので、これは結構大切なように思います。

・ワーキングメモリーの弱い子は、音声の場合は、音声をメモするときの、音声の速度や間も重要ですし、書き写す場合には、元になる情報の書いてある面と筆記面との距離、視線の移動距離やそれに掛る時間も見ていきたいです。

・座りやすさを考える。
「疲れる」ことを軽減して、必要な時間や量書くことに向かえる状況を整えられないか考えることもあります。
椅子の高さや座面や背もたれの固さ、それから足元の感触なども検討材料になることがあります。

こういうことを考えて学習の土台を整えていきたいな、と思います。

そして、「書きやすさ」と共に「表現したい」という意欲も書き立てる工夫をコミュニケーションの中で、ある種の演出を試みます。
「表現したい」「書きたい」という意欲や気持ちが芽生えることが「書く」ということではとても大切だと思います。
それから書写や書道の場合には、伝統についての理解や興味を深めるということも必要かもしれません。


「書字動作」と言っても、目に見えるモノばかりではありません。

書きやすさ、そして読み手の読みやすさ、など書くことの目的まで見据えて、全体像を考えて書字については考えていきたいものです。


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